【医師監修】肌育注射最新ニュース 「サーモンDNA」で何が変わるのか ── PNとPDRNの違いを、分子の大きさと最新エビデンスから読み解く

肌育注射に使われるPN(ポリヌクレオチド)とPDRN(ポリデオキシリボヌクレオチド)。どちらもサーモン(鮭)のDNA断片を原料とする成分ですが、得意とする働きが異なります。本記事では、2025年から2026年にかけて発表された査読済みの科学論文をもとに、両者の違いを「分かっていること」と「まだ分かっていないこと」を区別しながら、できるだけ正確にお伝えします。効果の感じ方には個人差があります。監修:Dr. Shimizu(MTC美容皮膚科クリニック代官山 院長)。

ざっくり一言でいうと

PNとPDRNは、どちらもサーモンのDNAから作られた成分。肌に何かを足すのではなく、肌が本来もつ力を引き出す方向の施術です。

ふたつは得意分野が違います。PDRNは、肌のゆらぎや赤みを「落ち着かせて整える」のが得意。PNは、肌の土台にじっくり働きかけて「ハリ・うるおい・キメを育てる」のが得意です。肌を落ち着かせたいならPDRN、土台から底上げしたいならPN——そんな目安で考えると分かりやすくなります(効果には個人差があります)。

PDRNは肌のゆらぎを落ち着かせて整える、PNは肌の土台を育てる。2つの得意分野の違い
PDRNは落ち着かせて整える、PNは土台を育てる。得意分野が異なります

30秒でざっくりわかる、この記事のポイント

  • PNとPDRNは、どちらもサーモンDNA由来のポリマー(高分子)。「まったく別の物質」ではなく、鎖の長さ(分子量)が違うことで主な働き方が変わる
  • 分類の目安は【約1,500 kDa】。ただしこれは一研究グループの提案で、国際機関の公式基準ではない
  • PDRNは受容体に結合する「すばやいシグナル」。PNはゲル状の「足場」をつくる
  • 【最新知見】PNも、分解される過程でPDRNと同じシグナル経路を活性化しうる——ただし試験管・動物での研究段階で、ヒトでの確証や独立した追試はこれから
  • 両者を直接比較した臨床試験(head-to-head RCT)は【現時点で存在しない】。使い分けは分子の性質からの推論にもとづく
  • 「成分が同じだから注射しても安全」は成立しない。注入用と化粧品グレードは品質管理がまったく異なる

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この記事で使う用語(タップで開く)

先に、いくつかの言葉を確認しておくと読みやすくなります。

PN(ポリヌクレオチド) ヌクレオチドという部品が多数つながった高分子の総称。美容医療では、サケDNA由来で分子量の大きい注入製剤を指すことが多い。

PDRN(ポリデオキシリボヌクレオチド) デオキシリボヌクレオチドからなるポリマー。化学的にはPNの一種だが、臨床では分子量の小さい画分を指す。

分子量(kDa) 分子の大きさを表す単位。キロダルトン。数字が大きいほど、鎖の長い大きな分子。

A2Aアデノシン受容体 細胞表面にあるスイッチの一種。これが入ると、炎症が抑えられ、修復が促されるとされる。

足場(scaffold) 細胞が接着して活動するための、立体的な土台。PNが真皮内でつくるゲル状構造がこれにあたる。

未承認医薬品・医療機器 日本国内で、医薬品医療機器等法(薬機法)にもとづく承認を受けていない製剤。医師の個人輸入により使用される。

PNとPDRNは「別物」ではなく、鎖の長さが違う(タップで開く)

まず、よくある2つの誤解を整理します。

誤解①「根本的に異なる別物質」——これは言い過ぎです。どちらもサケのDNAから作られる、同じ骨格を持つポリマーです。

誤解②「PDRNはPNの一部分で、同じもの」——これも厳密には正確ではありません。最新のレビュー論文では、両者は同じDNA骨格を持ちながら、鎖の長さ(重合度)と分子量によって区別される、性質の異なる製剤クラスとして整理されています。

2025年にMarquesらが発表した論文では、おおよそ1,500 kDa(キロダルトン)を目安に、それ未満をPDRN、それ以上をPNと呼び分けることが提案されました。ただし、これは違いを言語化するための共通のものさしとして広まりつつある提案であって、WHOやIUPACといった国際機関が公式に採用した基準ではありません。この点は、誠実にお伝えしておくべきところです。

PNとPDRNは分子量による連続体。低分子のPDRNはシグナル、高分子のPNは足場として働く
図1 PNとPDRNは、分子量によって主な働きが変わる『連続体』として理解できる
「すばやいシグナル」と「じっくり効く足場」(タップで開く)

PDRNの得意技 ── 受容体に届くシグナル

PDRNは比較的小さな分子です。肌に入ると組織内を速やかに広がり、細胞表面のA2Aアデノシン受容体というスイッチに結合するとされています。これにより炎症を引き起こす物質(TNF-αやIL-6など)の産生が抑えられ、修復を促す物質(VEGFなど)が増え、コラーゲンを分解する酵素の働きが抑えられる、と報告されています。

この仕組みは、もともと創傷治癒(傷の修復)の分野で研究されてきました。Squadritoらがイタリアで行った大規模臨床試験(216名、二重盲検プラセボ対照)では、糖尿病性の足潰瘍に対して有意な治癒促進が報告されています。ただし、これは「傷の治り」を見た研究であり、美容目的の肌質改善を直接証明したものではない点には注意が必要です。

PNの得意技 ── 細胞が乗る足場

一方、PNは分子が大きいため、真皮に注入されると周囲の水分を引き寄せ、粘り気のある三次元のゲル状構造(足場)をつくります。年齢を重ねた肌では、コラーゲンが断片化して細胞が接着する場所を失い、活動が鈍ることが知られています。PNの足場に細胞が再び接着して伸び広がることで、コラーゲン合成が再開する——この仕組みはメカノトランスダクションと呼ばれ、有力な仮説として研究が進んでいます。ただし、ヒトの肌でこの流れが完全に証明されたわけではなく、現時点では「もっともらしい説明モデル」の段階です。

PDRNは受容体に結合するシグナル、PNはゲル状の足場。最新研究ではPNもシグナル作用を持つと示唆
図2 PDRNは『シグナル』、PNは『足場』。最新研究は、この2つが重なり合うことを示しつつある
最新研究が示す「PNも、ゆっくりシグナルを出す」(タップで開く)

ここまでだと「PDRNはシグナル、PNは足場」という単純な二分法に見えるかもしれません。しかし、2025年から2026年にかけての研究が、この枠組みをアップデートしつつあります。

高分子のPNも、体内の酵素で徐々に分解される過程で、PDRNと同じA2A受容体の経路を活性化しうる、という実験データが報告されました。老化した細胞モデルを用いたByunらの研究(2025年)と、植物由来のPNを用いたHwangらの研究(2026年)が、それぞれ近い経路の活性化を示しています。

この知見をどう受け止めるべきか

ただし、ここは慎重にお伝えすべき点です。これらは試験管内・動物モデルでの研究であり、ヒトの肌に注射した場合の効果を直接証明したものではありません。また、現時点では特定の研究グループからの報告が中心で、完全に独立した第三者による追試はまだ十分に蓄積されていません。したがって「PNもA2A経路を活性化することが確定した」と言い切るのは時期尚早で、「複数の基礎研究で示唆されており、今後の検証が期待される段階」と理解するのが正確です。

この知見が示すのは、PNとPDRNが「まったく別の物質」ではなく、同じDNA由来のポリマーが、分子量の違いによって主な働き方のバランスを変える「連続体(グラデーション)」のような関係にある、という見方です。大きなPNは、最初は「足場」として働き、時間をかけて分解されながら「シグナル」の役割も担っていく——これは現時点の研究を統合した暫定的なモデルとして、最も無理なく説明がつく考え方です。

「同じ成分だから安全」ではない ── 注入グレードの話(タップで開く)

PN/PDRNを語るうえで見落とされがちなのが、「注入用として製造された製剤かどうか」という点です。同じ「サケDNA由来」と表記されていても、真皮に直接注入する医療用の製剤と、肌に塗る化粧品とでは、求められる品質管理の水準がまったく異なります。

注入用製剤は、無菌性の確保、細菌由来の発熱性物質(エンドトキシン)の管理、アレルギーの原因となる残留タンパク質の除去、分子構造の保護といった、化粧品には求められない厳密な工程を経ています。さらに、皮膚に塗る成分は本来、分子量がおよそ500ダルトンを超えると角層をほとんど通過できないことが古くから知られており(いわゆる「500ダルトンルール」)、高分子のPN/PDRNを塗っても、注射と同じように真皮へ届くわけではありません。

「成分が同じだから注射しても大丈夫」「化粧品にも入っているから安心」という説明は、科学的に成立しません。品質保証のない外用品を注射に転用することは、感染・炎症・異物反応などの重大なリスクを伴うため、絶対に避けるべきです。

施術を検討される方へ ── 確認したい4つのこと(タップで開く)

ここまでの内容を、実際の施術選びに落とし込むと、確認すべきことはシンプルになります。当院では、以下のいずれのご質問にもお答えしています。

肌育注射を受ける前に確認したい4つのポイント。PNかPDRNか、注入用か、肌に合うか、リスクと長期データ
図3 『DNA由来』『再生系』という言葉だけで判断せず、製剤の中身を確認する

特に4つ目が大切です。この分野は研究が急速に進んでおり、まだ決定的な答えが出ていない部分が多くあります。だからこそ、効果を断定せず、「分かっていること」と「まだ分かっていないこと」を正直に説明してくれるかどうかが、信頼できるクリニックを見分ける一つの目安になります。

正直に言うと(この分野の限界について)(タップで開く)

ここまで最新研究を紹介してきましたが、誠実に補足すべきことがあります。

PNの美容効果について、エビデンスの質はまだ高くありません。2025年に発表されたPN美容医療の系統的レビューは、「有望だが、エビデンスの質はlow〜moderate(低〜中程度)」と結論づけています。研究の数も症例数も限られ、評価方法も統一されていないためです。

さらに、かつてPNの代表的な臨床試験として広く引用されていた論文(2014年)は、製薬企業からの資金提供が適切に開示されていなかったため、2016年に撤回されています。撤回されたにもかかわらず引用され続けてきた経緯があり、PNの臨床的根拠を過大に評価しないよう注意が必要です。

そして、本記事の主役である「PNもA2A経路を活性化する」という知見も、繰り返しになりますが、試験管・動物での研究段階です。「連続体モデル」も、現時点の研究を最も無理なく説明する暫定的な解釈であって、確定した定説ではありません。今後、独立した研究グループによる追試や、PNとPDRNを直接比較する臨床試験が出てくれば、この理解はさらに更新されるはずです。

「最新の科学が、こう言っている」と断言することは簡単です。けれど、その確からしさのレベルまで含めてお伝えすることが、医療情報を扱う者の責任だと考えています。

施術を受ける方へ/当院の肌育注射について(タップで開く)
  • 「DNA由来」「再生系」という言葉だけで選ばないでください。PNなのかPDRNなのか、注入用なのか化粧品グレードなのか。中身を確認することが、納得のいく施術選びの第一歩です。
  • 効果には個人差があります。「必ず効く」「コラーゲンが何倍になる」といった断定的な表現には、慎重になってください。
  • 不安なことは、遠慮なく医師に尋ねてください。腫れや内出血などのリスク、ご自身の肌に合うかどうか、長期的なデータの有無。良いクリニックは、こうした質問を歓迎します。

MTC美容皮膚科クリニック代官山の肌育注射プログラムは、ETENNA REJU PNを中心に、お肌の状態に合わせた複数の製剤を使い分けています。PNが提供する「足場」と「うるおいの環境」、そしてゆっくりと発揮される可能性のあるシグナル作用——この組み合わせが、肌そのもののコンディションを整えるアプローチの土台になると考えています。どの製剤がご自身に合うかは、カウンセリング時に医師がご説明いたします。

重要なお知らせ(未承認医薬品等に関する説明)(タップで開く)

当院で使用するETENNAシリーズおよびPN/PDRN注入製剤は、日本国内において医薬品医療機器等法にもとづく承認を受けていない未承認医薬品・医療機器です。

  • 入手経路:医師の責任のもと、個人輸入により入手しています。
  • 国内承認医薬品等の有無:同一成分・同一効能で国内承認された医薬品はありません(ヒアルロン酸製剤など、一部に国内承認された代替治療があります)。
  • 諸外国における安全性等:韓国・欧州等で流通・使用されていますが、それらの承認は日本国内での安全性・有効性を保証するものではなく、重大なリスクが今後明らかになる可能性も否定できません。
  • 副作用被害救済制度:本治療は医薬品副作用被害救済制度の対象外です。

効果の感じ方には個人差があります。腫れ・赤み・内出血・痛み・感染・アレルギー・しこり等のリスクが生じる場合があります。

よくあるご質問(FAQ)(タップで開く)

Q. PNとPDRNは何が違いますか?

どちらもサケのDNAから作られるポリマーですが、分子量が異なります。PDRNは比較的小さく(概ね1,500 kDa未満)、A2A受容体に結合して抗炎症・修復のシグナルを出すとされます。PNは大きく(概ね1,500 kDa以上)、真皮内でゲル状の足場を作り、コラーゲンを作る細胞が働きやすい環境を長期的に整えます。最近の基礎研究では、PNも分解の過程でA2A経路を活性化しうると示唆されていますが、ヒトでの確証や独立した追試はこれからの段階です。両者は「まったく別の物質」ではなく、分子量によって主な働き方が変わる連続体として理解するのが、現時点で最も無理のない見方です。

Q. リジュランはPNですか? PDRNですか?

メーカー(PharmaResearch社)の公式情報によれば、リジュランの注入製剤(REJURAN i、HB plus等)はPN(ポリヌクレオチド)製剤として説明されています。一方、同ブランドの外用化粧品ライン(スキンケア製品)には、化粧品グレードのc-PDRNを使用した製品があります。「リジュラン」とひとことで言っても、注入用と外用では成分のグレードが異なるため、区別して理解することが大切です。

Q. PDRNとPN、どちらが効果が高いですか?

「どちらが上」という比較ではなく、得意とする働きの方向性が異なります。PDRNは抗炎症・修復に、PNは足場形成による長期的な肌質サポートに強みがあるとされます。ただし、PNとPDRNを同じ条件で直接比較した臨床試験(head-to-head RCT)は、2026年時点でも報告されていません。この使い分けは主に分子の性質からの推論にもとづくもので、今後の研究が待たれます。

Q. 1,500 kDaという数値は国際的な基準ですか?

いいえ。1,500 kDaは2025年にMarquesらが論文で提案した分類の目安であり、WHOやIUPACなどの国際機関が公式に採用した基準ではありません。ただし、PN/PDRNの違いを議論するための共通のものさしとして、急速に広まりつつあります。

Q. 化粧品のPDRNを注射に使っても大丈夫ですか?

大丈夫ではありません。注入用製剤と化粧品グレードの製剤では、滅菌方法・不純物の除去水準・分子構造の保護など、品質管理の基準が根本的に異なります。「成分名が同じ」であっても「製造基準が同じ」とは限りません。品質保証のない外用品を注射に転用すると、感染や異物反応などの重大なリスクがあります。施術前に「注入用として製造された製剤ですか?」と必ず確認されることをお勧めします。

Q. この分野のエビデンスはどの程度信頼できますか?

PDRNについては、216名を対象とした質の高い臨床試験(創傷治癒の領域)があります。一方、PNの美容医療への応用については、2025年の系統的レビューが「有望だがエビデンスの質はlow〜moderate」と結論づけています。また、かつてPNの代表的な臨床試験として引用されていた論文(2014年)は、製薬企業からの資金提供が適切に開示されていなかったため、2016年に撤回されています。研究は急速に進んでいますが、「科学的に証明済み」と断言できる段階にはまだ至っていない、というのが誠実な現状認識です。

Q. MTCの肌育注射には何が使われていますか?

当院のメイン製剤であるETENNA REJU PNは、その名の通りPN(ポリヌクレオチド)を主成分としています。お肌の状態によっては、ヒアルロン酸ベースのETENNA HYALや、複合型のETENNA REJU EXOをご提案する場合もあります。いずれも未承認製剤であり、医師の説明を十分にお受けいただいたうえで、ご希望に応じて選択いただきます。

参考文献(タップで開く)
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本記事は、MTC美容皮膚科クリニック代官山の医師監修のもとで作成しています。記事内容は査読済みの学術文献にもとづいていますが、個人の肌状態によって最適な施術は異なります。施術をご検討の方、治療中の方は、事前に医師にご相談ください。なお、本記事の内容は特定の製品の効果を保証するものではなく、効果の感じ方には個人差があります。最終更新:2026年5月。